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パフォーミング・クレジット四半期レポート:現在の貸し手は誰なのか?高インフレ対応として2022年3月に始まった連邦準備制度理事会(FRB)の利上げによって、金利は歴史的なペースで上昇しました。金利が高騰した結果、商業用不動産市場では物件取得に伴う資金調達がより高値で困難になりました。その結果、資産に対する需要が大幅に減少し、不動産取引件数は10年ぶりの低水準へと落ち込み、不動産評価額が大きく影響を受けました。
しかし、FRBやその他中央銀行が利上げを停止して以来、金利は安定し、低下傾向にあります。FRBが目指してきたのはは経済の軟着陸、つまり成長を損なうことなくインフレを低下させることです。幸いにも、これまでのところは成功しています。インフレ率は2022年ピーク時から3割程度低下した一方で、経済成長は安定が維持されています。
歴史的な観点から見ると金利は依然として高いものの、より安定した金利環境からの影響が商業用不動産市場で確認され始めています。商業用不動産向け融資は、2023年に一旦横ばいとなった後に回復を見せ始めています。2024年第1四半期には、不動産評価額が底値またはそれに近い水準にあることに市場参加者が安心感を持ち始めたことで、取引総額は1080億ドル相当に達しました1。デット資本市場も、CMBS(商業用不動産担保証券)発行という形で力強く復活し、2023年同期比でほぼ3倍の増加を記録しています2。これら全ては、始まったと見られる回復の確固たる基盤となるものです。
一方で、不動産のファンダメンタルズは、殆どのセクターで底堅さを示しています。特に一戸建て賃貸住宅や学生寮は需給不均衡が大きい分野であり、引き続き堅調なセクターです。マイホームは以前より手の届かないものになっている米国では、現在住宅建設が新しい世帯形成の需要に追い付いていません。学生寮に関しては、過去10年間で一流大学入学者が急増する一方で、学校からの資金援助不足や州予算の削減により、その建設は抑制されてきました。この供給不足が賃料の健全な成長を促進した結果、賃料は30%上昇したほか、学生寮開発・運営における民間投資の機会が創出されています3。
結論:不動産市場の見通しは転換期にあり、魅力的な条件で資産を取得できる今こそ、資本を活かす絶好の機会であると考えています。下図で示すように、賃貸住宅市場のファンダメンタルズは堅調さが維持されている一方で、多くのセクターでは魅力的なディスカウントが確認されおり、同市場の主要セクターである集合住宅(マルチファミリー)では、ピーク時価格から-26%という大幅な割引率となっています4。今後は、金利がさらに安定し、低下に転じた場合には特に、現在取得する優良不動産が大幅に値上がりする可能性があると当社は考えています。
脚注
1. 出所:FRED全商業用銀行、商業用不動産ローン。
2. 出所:グリーン・ストリート。
3. 出所:コースター。
4. 出所:グリーン・ストリート。
開示情報はPDFをご覧ください。