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上場実物資産に有利な環境へと変化学生寮セクターでは、その需給トレンドから長期にわたる力強い成長が示唆されています。
学生寮を見つけることは、大学生にとって、詰め込みで試験勉強することや徹夜で論文を仕上げるのと同様に、重要な経験の一部です。しかし、古くなった戸建に学生6人が同居するような時代は終わりに近いかもしれません。刷新された学生寮に対する需要は強く、不動産ディベロッパーは斬新な学生寮の開発を通じてそのニーズに応えようとしています。学生寮は、不動産投資の新興分野として注目に値するセクターです。
実際のところ、学生寮はその他不動産タイプと比べると新しいセクターです。これまでは集合住宅セクターの一部と見なされてきましたが、今や独立した賃貸住宅セクターであり、独自の課題と機会が存在します。これを念頭に置きつつ、同セクターの力強い長期成長見通しの背景にある学生寮市場の3要素について説明します。
学生寮セクターの成長を後押ししている主な要因は、需要の積み上がりです。維持管理が行き届いていないキャンパス外の古い住居や老朽化したキャンパス内の寮に代わる住居に対するニーズが高まっています。大学入学者数は2010年にピークを打ってから減少に転じていましたが、2019年以降は回復に転じ、トップの大学では2022年から2023年にかけて2%の増加を記録しています1。
入学者の減少や閉鎖に直面する大学が一部で存在するものの、その他では継続的な伸びが確認されています。大学スポーツリーグの最高峰であるディビジョン1に所属している大学や評価の高い研究プログラムを持つ大学など、需要が高い大学の入学者は増加しているものの、知名度に欠ける大学の入学者は伸び悩んでいる状況です2。その結果、学生寮需要は、所在地やデモグラフィックによって乖離する傾向があります。加えて、大学入学者は世界的に増加を記録しており、世界トップの大学の多くでは学生寮を増設し、需要増に対応しています。ボナルドが集計したデータによると、世界の大学入学者数は2023年に6.4%増加しています。
大学生なら身に染みて分かっているように、学生寮の供給逼迫は深刻な状況にあります。大規模の公立大学では、過去10年以上に渡って学生寮需要が入学者数を上回っています(図表1)。
それと同時に、新規供給見通しは近年減少しています。新規建設件数は大幅に減少しており、2021年~2023年に新たに追加された床数は年平均33,700床と、2014年~2020年の同56,200床を下回っています3。この状況は米国に限ったものではありません。学生寮を巡る世界的な需給状況を見ると、提供率(学生総数に対する床総数の比率)は過去3年間で22.5%低下しています4。
供給不足の理由は主に3つあると考えられます。第1は、金利上昇を受けた資金不足です。第2に、人件費と資材費の高騰、規制変更の影響で新規開発が減速しました。しかし、事業のファンダメンタルズが建設費上昇からの影響の軽減に寄与してきた点は留意すべきポイントです。
最後に、資金難に直面する公立大学は、州予算の削減によって新規開発資金を確保することが不可能となっています。大学教育に対する需要は拡大するも、州政府の財政は緊縮していることから、キャンパス内寄宿舎の新設と資金調達を民間部門に頼る公立大学が増加しています。私立大学の場合、規模はより小さく、需要もそこまで広範囲ではない傾向にあり、基金や慈善団体、学生からの納付金を活用して学生寮の開発・運営を行ってきたことから、民間のディベロッパーにとっては投資妙味に欠けるかもしれません。
不動産開発業者や投資家は、キャンパスに程近く、充実したアメニティを備えた住まいと学びの複合住宅プロジェクト開発に向けて模索を続けています。また、テクノロジー、サービス重視のアプローチ、サステナビリティといった要素は、学習体験の最適化において重要なポイントとなっています。供給不足を革新的な方法で解消するための取り組みが増えていることは、投資家にとって朗報です。
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