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クレジット:高まる​PIK​(繰延利息)の​認知度
2024年5月14日

金利上昇環境の​中、​利払いの​柔軟性を​高める​ために​PIK​(繰延利息)を​利用する​借り手が​増えています。​PIKを​利用する​ことで、​借り手は​現金以外の​方法で​利払いを​行うことが​可能と​なります​(図表5)。​最も​一般的な​方​法は、​借入総額に​利払い分を​加算すると​いう​ものです。​ローン債務を​履行する​ために​PIKを​利用する​借り手の​増加は​市場ストレスの​発露と​みなされる​ことが​多く、​従って​貸し手の​リスクが​高まっていると​解釈されます。​しかしながら、​実際は​そんなに​単純な​話では​ありません。​借り手が​PIKを​利用したか​どうかだけでなく、​なぜPIKを​利用するようになったのか、​また、​基盤と​なる​事業が​健全か​どうかを​理解する​ことが​重要と​なります。​例えば、​PIKを​利用する​借り手の​中には、​基礎と​なる​ビジネスモデルが​順調に​稼働しているにも​かかわらず、​初回の​事業向け資金調達の​際に​融資実行時点から​PIKを​利用する​場合も​あります。​一方で、​融資期間中に​事業が​暗礁に​乗り上げたり、​利払い​能力を​失うなど、​契約修正と​して​PIKを​利用する​ケースも​あります。​後者の​場合でも、​将来的に​支払いを​再開できる​可能性が​あり、​多くの​場合、​そうなる​リスクを​取る​価値は​あります。

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一般的な3つのPIK(繰延利息)条項

すべての​投資に​おいて​重要な​点は、​リスクと​機会の​バランスを​取る​ことであり、​PIKも​例外では​ありません。​例えば​PIKは、​未払い​利息を​支払う​手段と​して、​現金の​代わりに​株式や優先株の​形を​とる​場合も​あります。​PIKは、​流動性の​問題に​直面している​企業が​現金を​手元に​温存するのに​役立ちますが、​元本に​加算される​利息の​金利が​高くなります。​また、​PIKが​株式の​形を​とる​場合、​株主資本が​希薄化する​可能が​あります。​貸し手に​とっての​リスクは、​未収利息を​回収できない​ことでしょう。​一方、​貸し手に​とっての​プラス面は、​PIKが​ローンの​利回りを​高め、​リターンを​押し上げる​可能性が​ある​ことです。​一部の​PIKは​概ね​大きな​懸念材料とは​みなされない​ものの、​債務負担を​増加させる​ことで​ローンの​潜在的な​リスク性を​高める​可能性が​あります。​従って、​ポートフォリオに​内在する​問題を​示唆する​1つの​指標と​なり得る​ことから、​注視に​値する​トレンドである​ことは​間違い​ありません。

金利が​高止まりする​中、​各企業とも​債務の​維持に​四苦八苦している​ため、​PIKの​利用は​今年から​2025年に​かけて​増加すると​S&Pグローバル・レーティングは​予測しています。​今後​借り​換えが​必要と​なる​上場・非上​場債券の​量は​膨大であり、​この​ことが​PIKの​利用増を​後押ししています。​しかし、​借り手の​中には、​シンジケート・バンクローンに​よる​資金調達に​苦労するかもしれません。​と​いうのも、​バンクローンの​ほとんどは​CLO​(ローン担保債権)に​売却されるからです。​一般的に、​CLOは​PIKファシリティで​資産の​5%以下しか​購入できず、​現在PIK利息を​支払っている​資産を​購入する​ことは​できません。​借入が​割高に​なり、​銀行融資が​鈍化した​ため、​CLOの​発行も​減少しています。

こうした​ことから、​今後、​プライベート・クレジットの​ソリューションに​よる​資金調達を​求める​借り手の​数は​さらに​増えていく​ことが​予想されます。​PIKの​利用が​増えるに​つれ、​投資家は​恐らく、​景気サイクルを​うまく​乗り​切ってきた​実績の​ある​マネージャーと​協力する​ことの​重要性、​そして、​ポートフォリオで​PIKのような​機能を​いつ、​どの​ように​利用するかに​ついて​慎重に​検討する​ことの​重要性を、​再確認する​ことに​なるでしょう。