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プライベート・クレジット:成長が見込まれる2025年

オークツリー・キャピタル共同CEO兼パフォーミング・クレジット部門統括責任者アーメン・パノシアンとの対談

2025年1月22日

ハイライト
 

  • プライベート・クレジット投資は、過去10年間で大幅な成長を遂げました。この理由は、パブリック・クレジットよりもデフォルト率が低い、総じて安定した資産クラスであるという事実と、一般的な債券を上回る力強い利回りにあります。
  • 金利は低下傾向にあるものの、プライベート・クレジットに対する需要は、2025年に入っても引き続き好調であると見られます。
  • 直接融資には多くの形態が存在し、リスクとリターンも様々です。
  • 規律あるリスク管理のアプローチを維持しつつノンスポンサー・ローンの組成が可能なベテランの運用者こそ、投資家に優れた成果をもたらすことができると考えます。

 

Q:2025年におけるプライベート・クレジットの見通しに触れる前に、過去数年にわたるプライベート・クレジット市場の変遷と現在の状況について解説してください。 

パノシアン:プライベート・クレジットは、世界金融危機以降、著しい成長を遂げています。ドッド・フランク法の導入後、銀行は特に中小企業、さらには一部のより大規模な中堅企業や大手企業向け融資から撤退し始めました。そのギャップを埋める形で、直接融資が台頭するようになったのです。6~8%程度の利回りを提供していたこの資産クラスは力強い伸びを見せ始め、2022年に米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向けて利上げを開始した後、その成長はさらに加速しました。FFレートと共にSOFR(担保付翌日物調達金利)が上昇すると、利回りは一気に12%程度まで上昇しました。

この時点で、数多くの機関投資家や富裕層投資家がプライベート・クレジットに関心を示すようになります。直接融資は過去10年間、資産価格の変動が少なく、安定した収益を生み出してきており、パブリック・デットよりもデフォルト率が低い、非常に安定した資産クラスだという事に気づいたからです。また、この時期はプライベート事業開発会社(BDC)の増加と重なり、投資家による同資産クラスへのアクセスが容易になりました。

2022年後半から2023年にかけて金利が上昇すると、経済とインフレを巡る懸念を受けて、銀行は再びシンジケート・ローン市場から手を引きます。債券が大きく売られ、2022年上期においてハイイールド債は7%、シニアローンは約4%下落しました。債券は大幅なディスカウントで取引されており、銀行は債券市場から約1年の間姿を消しました。ベース金利が5%超える中で、プライベート・クレジットから得られる利回りは12%程度に達しました。

2023年後半以降、市場に戻ってきた銀行は、直接融資市場よりも100~150bps程度タイトなスプレッド、かつ借り手により有利な条件で、アッパーミドルや大型案件市場で競合するようになります。その結果、直接融資のスプレッドは500-550bpsまで縮小しました。このスプレッド縮小に伴って、ここ3~6ヶ月におけるM&A案件の動きは、2023年全体よりも活発になっています。

直接融資の利回りは昨年13%から10%近くまで低下しましたが、パブリック市場に対する直接融資の相対的な価値はまだ十分に満足できる水準です。ハイイールド債のスプレッドは縮小し、現在は300bpsを下回っていますが、これは通常の300~450bpsレンジ内であり、トータルリターンは依然としてまずまず良好です。
 

Q:銀行が市場に回帰する中で、スプレッドがより高く、より多くの契約条項を伴うプライベート・ローンを企業が選好する理由とは? 

パノシアン:銀行が最も積極的なのは、格付機関が評価しやすいローンです。上場銀行ローンの大半は、CLO(ローン担保証券)を通じて保有されており、このCLOは格付けに敏感なシンジケート・ローンの買い手です。 格付けが低い又は格付けができない場合、その企業を買収するスポンサーは、むしろ100~200bpsの追加コストを支払って、契約条項を受け入れるでしょう。例えば、企業分割などを理由に5年以上の監査済み財務諸表が存在せず、銀行融資の確保がより困難な事業の場合、借り手は直接融資に頼ることがあり、多くのテクノロジー企業(ソフトウェア関連企業など)が直接融資をよく利用しています。これは、LTVベースで見る負債の割合が他企業よりも低い場合でも、テクノロジー企業はキャッシュフローに対する負債の割合が非常に高いケースが多いためです。これらの企業が格付けを得られる可能性は確かではなく、相対的に低いLTV、高い潜在成長率、および債務返済が必要となった場合にキャッシュを生み出す能力を考慮した上で融資を行うダイレクト・レンダーの方が、シンジケート・ローン市場よりも優れた貸し手となる場合があります。

さらに、銀行は8億ドル規模の大型案件や、財務状況が最も健全な企業に重点を置いています。また、競争上の理由から事業を公にしないことを望む中堅企業も、ダイレクト・レンディングの有力な候補となることがよくあります。もちろん、リスクの高い企業への融資には、潜在的なリスクの高さを反映した積極的な価格設定リスクが伴う可能性はあります。
 

Q:現在保有しているクレジット・ポートフォリオについて、どの様にその健全性を測り、モニタリングしていますか?

パノシアン:ポートフォリオを見る際にモニタリングしているのは、事業収益、コスト、キャッシュフローの数値で、前期および企業予想との比較を行います。少なくとも四半期毎、時には月次で企業と対話し、当社見通しに対するパフォーマンスを評価しています。また、特に業績低迷の兆候が見られる業界の事業については、企業の健全性を評価するためのウォッチリストを作成しています。
 

Q:プライベート・クレジットの様々な市場について触れてきましたが、それぞれの収益やリスクはどのように分析していますか?

パノシアン:一つの考え方としては、企業規模が小さくなればなるほど、ビジネスリスクも高まるという見方です。小規模な企業は、サプライヤーや顧客基盤が集中していることが多く、収益の減少やサプライヤーからの条件の締め付けなどが発生した場合、より大きな打撃を受ける可能性が高くなります。当社では通常、小規模事業には相当なビジネスリスクがあると考えているため、あまり関与していません。もちろん、このマイナス要因を補う要素として、通常は厳格な契約条項が設けられています。一方、大型案件を巡っては、スプレッドが低く、借り手に有利な条件のローンを提供する銀行と競合します。つまり、大型案件のプライベート・レンダーは、債務履行能力を示す四半期毎の財務維持コベナンツのチェックを含まない契約を受け入れなければなりません。直接融資の場合、こうした法的文書の抜け穴はかうまくカバーされています。コアの中型案件では、制限条項がある場合もあれば、ない場合もありますが、大型案件よりも有利なプライシングが可能です。もう一つのカテゴリーは、スポンサー付き直接融資です。これは、上場企業や創業者が所有する企業など、戦略的イニシアチブを推進するために資金が必要になるケースで、依然として低レバレッジを望み、投資収益率に敏感な企業向けの融資です。このような場合は、通常レンダーは1社限りです。大型案件の様に、1案件に多数の貸し手が関わることはほとんどありません。
 

Q: 今後6~12ヶ月におけるプライベート・クレジットのリターン、そして今後1年間のベースレートの動向はどの様に見ていますか?

パノシアン:トランプ新政権下では、少なくとも短期的には、大幅な赤字財政となる可能性が高いと思われます。つまり、2か月前の予想よりも、長期金利はやや上昇するでしょう。しかし、金利に関しては、景気後退や失業率の急上昇といった経済ショックのサインが現れない限り、FF金利が大幅に下がることは当分ないでしょう。どちらに関してもこの兆候は確認されておらず、インフレは抑制可能な範囲内に収まっています。

新政権はFRBに金利引き下げを促すかもしれませんが、FRBはむしろ、リセッションと失業率の急上昇の回避に重点を置いています。 イールドカーブの短期部分における大幅な金利低下は予想しておらず、FRBは金利を緩やかに引き下げ、短期部分は3~4%の範囲に落ち着く一方で、長期部分は4%を上回る水準が維持される可能性が高いと見ています。これに加え、PEファンドの投資待機資金が潤沢にあることを考えると、今後1~2年で取引が活発化すると見られ、スプレッドの正常化が見込めるでしょう。その結果、トータルリターンはいくらか低下する可能性もありますが、これは取引の動向に大きく左右されます。
 

Q:従来のスポンサー付きクレジット戦略と、オークリーとその戦略のアプローチが異なる点は?

パノシアン:オークツリーではスポンサー付き融資も行っていますので、それを好まないというわけではありません。しかし、案件フローの頻度の観点からみると、スポンサー付き融資はプライベート・クレジット市場の中で最も一貫性のある部分だといえ、プライベート・クレジットの「ベータ」部分のようなものです。一方で、当社はアルファも重視しているため、従来のプライベート・クレジットとは異なる戦略(ノンスポンサーの直接融資、資産担保融資(ABF)、レスキュー融資など)を10年以上前から手掛けてきました。これら分野における案件の発掘や組成のハードルはより高くなるため、大きな潜在価値を持つ投資の実行が可能です。リスクをコントロールしながら、高いリターンが期待できるだけでなく、分散投資という非常に重要な要素になり得ます。これは非常に重要なポイントであり、当社におけるプライベート・クレジットのプラットフォームが、顧客ポートフォリオに差別化された付加価値を提供できる分野だと考えています。


 

重要な開示事項

すべての投資にはリスクが伴います。投資の価値は時間とともに変動し、投資家においては、利益を得るもしくは投資の一部または全てを損失する可能性があります。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。分散は、利益を保証するものではなく、金融市場の下落局面で損失を防ぐものではありません。

資産クラスとして、プライベート・クレジットは多様な債券で構成されています。それぞれのリスク/リターン特性は異なるものの、プライベート(非上場の)クレジット投資では、資金調達の選択肢が限定的な企業へのオポチュニスティックな投資を模索するため、一般的に、上場のものと比較してデフォルト・リスクが高くなります。プライベート・クレジット投資では、通常、発行体が投資適格未満または無格付けであるため、より高いリスクの対価として利回りもより高くなります。

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