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インフラストラクチャー:AIの普及を背景とした電力需要の増加
2024年5月14日

AI(人工知能)とクラウド技術の成長が、ヘルスケアからサイバーセキュリティ、金融サービスなど、さまざまな業界に多大な影響を与えています。おそらくこれより注目度は低いですが、データセンターに必要な電力需要の増加が、インフラに大きな影響を与える可能性があります。

AIとは、コンピュータが様々なタスクを達成しようとする際に、本質的に学習し適応することを可能にする技術を表す言葉です。AIにはさまざまな用途がありますが、共通しているのは膨大な量のデータを使用する点です。実際、標準的なAIモデル/アルゴリズムでは、モデルを実行し、アウトプットを生成するために、地球上の砂粒の数よりも多くの計算が必要となります。その結果、膨大な電力を必要とする大規模なデータセンターが不可欠となるのです。これが、生成AIの採用によって電力需要の段階的変化が促されている理由です。データセンターの電力消費量は、今後数年間で大幅に増加すると予想されています(図表1)

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データセンターの電力消費量は2030年までに6倍増が見込まれている

しかし、これらのデータセンターは極めて大きな電力を消費するため、そのうちの1つが現在の電力網から電力を引き出すだけで、不安定な影響を及ぼしかねません。その結果、これらのデータセンターの建設許可を得る際には、電力ソリューションの用意が必須となっています。つまり、大手テクノロジー企業が事業を拡大するためには、電力調達能力が不可欠となっているのです。

再生可能電力資産の所有者、開発者、運営者は、この電力需要の増加から利益を得ることになると当社は考えています。大手テクノロジー企業は、これまでも再生可能エネルギーの最大の購入者でした。これらの企業が再生可能エネルギーを選択する主な理由は、以下の2つです。 

  • ネットゼロ目標:テクノロジー企業はネットゼロに向けて野心的に取り組み、グリーン電力利用を100%とする目標に掲げる場合が多々あります。より多くの電力需要に対応するためにはより多くのデータセンターが必要となることから、テクノロジー企業が再生可能エネルギーという選択肢を追求するようになることが予想されます。
  • 価格:グリーン電力へのコミットメントも重要ですが、価格も重要です。これまで、経済的な観点から再生可能エネルギーが魅力的な存在となってきました。再生可能エネルギーの価格は近年大幅に低下しており、現在では世界の主要市場のほとんどで最も安価な電力形態となっています(図表2)。
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グローバル均等化発電原価(LCOE)

上記の結果、テクノロジー企業は電力を確保する際の購入契約において、価格やその他の条件についてより柔軟になっています。市場での存在感が大きいことから、再生可能エネルギー発電事業者にとって有利な方向に業界の力学が変化しつつあるのです。

再生可能電力に対する企業の需要は供給力を上回っており、再生可能電力資産の所有者や運営者にとっては、短期間で追加容量を実用化する大きな機会が生まれています。当社では、資本にアクセスを持ち、技術面で高い専門性を持つ事業者、そして(喫緊の必要性があることから)すでにこれらのプロジェクトに投資している事業者が、今後利益を享受できると考えています。

インフラ市場の見通しやその他オルタナティブ資産クラスに影響を与える主要なテーマについては、オルタナ四半期レポートをご覧ください。