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資産担保融資(ABF):プライベート・クレジットの次なるフロンティア
2025年3月5日

概要
 

資産担保融資(ABF)はプライベート・クレジットの一形態です。従来のコーポレート・プライベート・クレジットでは、その返済が貸出先企業のファンダメンタルズや借り換え能力に基づくのに対し、ABFでは自己償却型の契約資産(ローン、リース、住宅ローンなど)が担保となっています。この仕組みを通じて、運輸事業から消費者金融に至るまで、世界経済に幅広く資金を届けるABFは、銀行や保険事業の主軸となってきました。

銀行が同分野の事業を縮小する中でノンバンク・レンダーに莫大な投資機会が提供されるとみられることから、ABFは今後ますます重要なプライベート資産クラスになると当社では考えています。5.5兆ドル規模のABF市場に占める民間レンダーの割合は5%未満と推定されており、進化するプライベート・クレジットは新たなるステージに踏み出していると当社では見ています(図表5)。過去10年にわたるプライベート・クレジットの成長は、主に直接融資に偏っていました1

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ABF のユニバースは広大で、プライベート・クレジットの進出は限定的

 

成長への準備は整った
 

様々な逆風に直面した銀行が融資から後退する中で、ABFはノンバンク・レンダーに大きな成長のチャンスをもたらすとみられます。財政緊縮、預金の信頼性やバランスシート上の資産価値に関する疑問、規制圧力の増大などが相まって、銀行は全般的に保守姿勢となり、リスク・ポジションを変更しています(図表6)。ABFの主力プロバイダーとして貸出意欲のある銀行は引き続き減少しており、その空白を埋めるべく、民間ABFレンダー参入の機会が提供されています。

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国内総生産(GDP)に占める銀行融資の割合は減少

これ同時に、ノンバンク融資の需要が高まっており、ABFの資金ギャップを考えると非常に大きな投資機会が出現しています。ミューチュアル・ファンドやヘッジファンドは高流動性資産を好み、保険会社は返済期間固定型一括ローンを選好すると同時に「格付け」のある投資に限定される場合が多い傾向にあります。また、プライベート・エクイティが対象とするのは、通常リスク/リターンがより高い投資です。これらの点は、民間レンダーにABFの莫大な機会が提供されていることを裏付けるもので、中でも経験豊富な貸し手にとっては大きなチャンスです。プレイヤーが少ない同分野で、借り手の複雑な資金ニーズを的確に捉えることで、(従来の企業向け融資や同等の資産担保証券のスプレッドを上回る)「複雑性プレミアム」を獲得することが可能です。

ABFには企業向け直接融資とは異なるいくつかの特徴があり、魅力的な投資特性を備えています。直接融資の返済原資は借り手単一企業のEBITDA2ですが、ABFの場合は通常、債権「資産」で構成される分散ポートフォリオに基づき、借り手複数企業のキャッシュフローが原資となります。つまり、ABFは借り手単一企業の業績に対する依存度が低く、ABFがカバーするセクターの幅広さを考慮すると、分散により優れたポートフォリオだと言えるでしょう。そして、ABFには構造上のプロテクションが盛り込まれるのが一般的で、担保資産は倒産隔離され、特別目的ビークルで保有されます。企業向け直接融資市場では「コベナンツライト」の傾向が見られるのに対し、ABFは現在「コベナンツヘビー」の市場であり、この様な貸し手権利の保護策がさらなるリスク低減に役立っています。

ABFが有するこれらの特徴は、力強いインカム創出と魅力的なリスク調整後リターンを含む様々な潜在的メリットを支えています。

 

結論

ポートフォリオの観点から、ABFはプライベート・クレジット配分における直接融資を補完するものとして捉えるべきであると当社は考えています。直接融資とABFを組み合わせることでプライベート・クレジット戦略の分散を図り、優れたインカム源泉や魅力的なリスク調整後リターン、分散効果を確保することが、ポートフォリオの最適化を図る上で重要となるでしょう。とはいえ、長期の莫大な機会として台頭しつつあるABFは、資産・案件毎に特徴が異なるばかりか、容易にアクセスできる資産クラスではありません。この複雑な資産クラスをナビゲートするには、経験豊富なマネージャーのサポートが不可欠だと当社は考えています。

プライベート・クレジットの次なるフロンティア、ABFの莫大な機会を掴むことができるのは、魅力的な投資機会に幅広くアクセス可能で、堅調なリターンの創出を犠牲にせずにリスク管理を最優先できるマネージャーであると当社は考えています。

 

 

 

脚注

1. 出所:プレキン・スペシャル・レポート「The Future of Alternatives in 2027」(202210月発行)、プレキン・グローバル・レポート「Private Debt 2024」(202312月発行)。このような事象や予測が起こるという保証はなく、実際の結果は表示されているものとは大幅に異なる場合があります。

2. EBITDA:利払い前、税引き前、償却前利益。

 

リスクに関する記述

資産クラスとして、プライベート・クレジットは多様な債券で構成されています。それぞれのリスク/リターン特性は異なるものの、プライベート(非上場の)クレジット投資では、資金調達の選択肢が限定的な企業へのオポチュニスティックな投資を模索するため、一般的に、上場のものと比較してデフォルト・リスクが高くなります。プライベート・クレジット投資では、通常、発行体が投資適格未満または無格付けであるため、より高いリスクの対価として利回りもより高くなります。

不動産関連商品への投資は、不動産の物件価値、賃料、入居率に影響を及ぼす経済、法令、環境の要因から影響を受ける場合があります。インフラ企業は、その事業に悪影響を及ぼす可能性のある様々な要因(高金利、高レバレッジ、規制コスト、景気減速、余剰生産能力、競争激化、燃料不足、再エネ方針など)から影響を受ける場合があります。

オルタナティブ投資はしばしば投機的であり、高いリスクを伴います。投資家は、投資金額の全てまたは多額を失う可能性があります。ハイイールド債には金利リスクが伴います。金利が上昇すると債券価格は下落します。一般的に、満期が長期になるほど金利リスクに対する感応度が高くなります。利回りは経済状況に伴って変動します。利回りは、投資意思決定に際する検討事項のひとつにすぎません。

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将来の見通しに関する記述

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インデックスの定義

プレキン·インフラストラクチャー·インデックスは、プライベート·キャピタル·パートナーシップへの実際の投資額に基づいて、投資家がプライベート·インフラ·ポートフォリオで平均的に獲得したリターンを指数化したものです。各データポイントは、包括的なパフォーマンスデータが保有されているクローズドエンド型ファンドのプールから、四半期開始時点と終了時点の両方で個別に算出されています。

プレキン·リアル·エステート·インデックスは、プライベート·キャピタル·パートナーシップへの実際の投資金額に基づいて、投資家がプライベート不動産ポートフォリオで平均的に獲得したリターンを指数化したものです。各データポイントは、包括的なパフォーマンスデータが保有されているクローズドエンド型ファンドのプールから、四半期開始時点と終了時点の両方で個別に算出されています。

プレキン·プライベート·エクイティ·インデックスは、プライベート·キャピタル·パートナーシップへの実際の投資金額に基づいて、投資家がプライベート·エクイティ·ポートフォリオで平均的に獲得したリターンを指数化したものです。各データポイントは、包括的なパフォーマンスデータを保有するクローズドエンド型ファンドのプールから、四半期開始時と終了時の両方で個別に算出されています。

クリフウォーター·ダイレクト·レンディング·インデックス(CDLI)は、特定の適格性要件を条件として、上場および未上場の両方を含む事業開発会社(BDC)の原資産の資産加重パフォーマンスで表される、米国ミドルマーケット(中堅)企業貸付のレバレッジなし報酬控除前パフォーマンスを測定する指数です。

FTSE EPRA Nareit ディベロップト不動産インデックスは、運用されていない時価総額加重トータルリターン·インデックスであり、先進国の上場エクイティ·リートおよび上場不動産企業で構成されています。

FTSEグローバル·コア·インフラストラクチャー50/50インデックスは、市場参加者に業界の定義によるインフラの解釈をもたらし、一定のインフラ·サブセクターへのエクスポージャーを調整しています。セクター別構成比率は、半年ごとのレビューの一環として、広範な3産業セクターについて、公益事業50%7.5%を上限とする線路/鉄道を含む運輸30%、パイプライン、衛星、電気通信塔を含むその他セクター20%の比率に従って調整されます。各グループ内の個別銘柄の比率は、投資可能時価総額の割合で調整されます。

ICE BofA 米国ハイ·イールド·インデックスは、米国国内市場で公募発行された米ドル建て投資適格未満社債のパフォーマンスを追跡しています。

ICE BofA メリルリンチ·グローバル·ハイ·イールド·ヨーロピアン·イシュアーズ·ノンフィナンシャル3%コンストレインド Exロシア·インデックスは、金融発行体またはロシアをリスク国とする証券を除く、より広範なインデックスに含まれるすべての証券を含むサブインデックスで、発行体のエクスポージャーは3%に制限されています。インデックスは米ドルヘッジ、月次でリバランスされています。

MSCI ワールド·インデックスは、先進国の株式市場のパフォーマンスを測定するように設計された、浮動株調整後時価総額加重インデックスです。

S&P 500指数は、幅広く保有されている米国の大企業500社の時価総額加重平均株価指数です。

モーニングスター LSTA 米国レバレッジド・ローン 100 インデックスは、米国レバレッジド・ローン市場のパフォーマンスを測定するために設計された時価総額加重型のインデックスです。

ナスダック指数は、ナスダック株式市場で取引されている企業を時価総額加重方式で追跡する指数です。

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