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Q&A:銀行セクター・リスクの影響 with マーク・カーニー

投資家の間では、足元における銀行セクターのリスクが幅広い経済や市場へと波及するのではという懸念の声が高まっています。ここでは、銀行における金融安定性リスク、金融政策、投資環境の影響に関する重要な問いかけについて、ブルックフィールド・アセット・マネジメンの会長、そしてトランジション投資ヘッドを務めるマーク・カーニーが回答します。

2023年5月19日

Q:イングランド銀行とカナダ銀行前総裁として、足元の状況は危機へと発展すると考えていますか?

私は深刻な危機だとは考えておらず、2008年の繰り返しでないことは確実です。金融セクターはより強固、そして強靭です。前回の危機時と比較すると、中央銀行による流動性支援もスピード感に優れ、より包括的な内容となっています。

これまでのところパニックが生じており、パニックは幅広く浸透した仮定が間違っていた場合に発生します。この場合、米国地方銀行を中心とした銀行のバランスシートにおける金利リスクの規模、そして企業預金の安定性です。

まずは、典型的な銀行危機について考えてみましょう。ここでは、1991年から2000年にかけてイスラエル銀行総裁を務めたジェイコブ・フレンケル氏の発言を参考にしたいと思います。サブプライム・ローン危機の渦中において、同氏は銀行のバランスシートについて次の様に発言しています:「Left(左行)には何もRight(正しい)ものはなく、Right(右行)には何もLeft(残された)ものはない」

言い換えると、銀行セクターの危機の中核にあるのは資産クオリティの問題だということです。この資産の質の問題と減損によって、銀行資本が消耗し、流動性の危機がソルベンシー(財務健全性)の危機へと発展するわけです。

しかし、これは地方銀行が現在直面している状況ではないと私は考えています。銀行のバランスシート左行を見ると、優良なクレジット資産が潤沢にあることが確認できます。そして右行、負債については、自己資本比率(リスク調整前)は9%超、安全性の高い流動資産は全体の40%を占めており、安定していると言えます。