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パフォーミング・クレジット四半期レポート:現在の貸し手は誰なのか?バイデン米大統領がインフレ抑制法(Inflation Reduction Act、IRA)に署名してから1年が経過しました。2022年に制定されたこの画期的な法律が幅広い上場インフラ市場に及ぼす主な影響について確認する良い機会だと言えます。IRAの成立によってクリーンエネルギー・プロジェクトに対する経済的インセンティブが大幅に拡大しており、上場インフラ市場における新たな成長機会の波を後押ししています。
IRAはいわば再生可能エネルギー開発への「ステロイド注射」であり、その恩恵を受けるのは米国内に資産を持つ企業です。当社では、税制優遇措置の調整は、米国における風力・太陽光発電の製造・開発増加のカタリストになると見ています。例えば、投資家所有の公益企業は、関連する投資税額控除(ITC)を即時ではなく資産の耐用年数にわたって実現するという要件を撤廃しました。これにより、公益企業が所有する太陽光発電プロジェクトの競争力と経済性が高まると当社は考えています。
さらに、この税額控除の仕組みの多くは、適用が1、2年だった従来の優遇措置とは異なり、数十年以上続くものです1。これにより、複数年をかけて開発される洋上風力発電プロジェクトの将来のコスト見通しがより明確になります。
IRAにはまた、原子力、クリーン水素、独立型再生可能エネルギー蓄電池、炭素回収・貯蔵といった分野への投資を促進する他のインセンティブも含まれています。クリーン水素の収益性が高まるにつれ、多くのミッドストリーム資産が再利用される可能性があり、北米のエネルギー・インフラ企業にとっては投資機会の創出につながるかもしれません。
例えば、消費地から数百キロ離れた生産地から、従来の天然ガスと、場合によっては水素の両方を輸送するために、ミッドストリーム資産を活用することが可能です。
これと同時に、欧州でもクリーンエネルギー投資が拡大する可能性が高いと考えます。米IRAに対抗する形でEUが発表した「グリーンディール産業計画(Green Deal Industrial Plan)」では、クリーンエネルギー関連の製造をEU内で継続する欧州企業に対して優遇措置が提供されます。これを背景に、風力タービンやソーラーパネルといったリニューアブル関連設備の工業生産能力の拡大など、欧州各地で設備投資が増加すると予想されます。再生可能エネルギーやクリーン水素によって、欧州におけるエネルギーの他国依存度が徐々に低下することも考えられます。
IRA以外にも、上場インフラ市場にプラスの効果をもたらすであろう、許可取得に関する幅広い改革案が年末にかけて審議入りするかもしれません。これにより、州をまたぐ新規プロジェクト開発が容易になると見込まれ、主に送配電やミッドストリーム・パイプライン、その他エネルギー移行関連のプロジェクトがその恩恵を受けると予想されます。
脚注
1 出所:2022年インフレ抑制法(H.R.5376)、ブルックフィールド・パブリック・セキュリティーズ・グループのリサーチ。
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