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潮目の変化:低金利が不動産市場に与える影響不動産市場の好転を待ち望んできた投資家にとって、米連邦準備制度理事会(FRB)による最近の利下げは、念願の転換点到来のシグナルかもしれません。
FRBが9月に実施した50bpsの利下げと、それに続く11月の25bpsの追加利下げを受けて、過去2年間続いた高金利による不動産取引の低迷は収束を見せています。資本コストの低下による商業用不動産投資のリターンが改善したことで、これまで様子見をしていた投資家が市場に戻り始めています。
FFレートの75bps低下はそれほど大きな変化ではないように思えますが、商業用不動産向け貸出金利の低下は不動産投資に大きな影響を与えています。例えば、2023年第3四半期において、ローン・トゥ・バリュー(LTV)60%、利率~7.2%の変動金利ローンを使い、テキサス州ヒューストンの集合住宅を1,500万ドルで取得したとしましょう(図1)。購入時における物件のキャップレートは6.2%、利払い控除後のキャッシュ・オン・キャッシュ・リターン(CCR)は年換算で4.8%を記録したことになります。
その1年後の2024年第3四半期、変動金利ローン利率は~6.3%へと低下しました。また、ヒューストン市場の賃料上昇を受けて同物件の純収益(NOI)は前年比3.4%増を記録、さらには価格の上昇を受けてエクイティ投資(価値)が6%増加し、年率CCRは5.7%となりました。ここで重要なポイントは、このリターン向上における最大の要因は、融資コスト(ローン利率)の低下だったという点です。
不動産デット市場が再開したことにより、市場サイクルは既に次の局面に突入しています。このことは、2024年上期において商業用不動産担保証券(CMBS)の新規発行額が前年同期比3倍を記録している点からも明らかです。CBREによると、2024年第3四半期のCMBS発行額は前年同期の3倍増の290億ドルに達しています。また、コースターの不動産データからは、商業用不動産市場における案件取引の増加が確認されており、第2四半期の取引規模は600億ドルと、前期比31%増となりました。
案件取引の増加は入札の活発化を受けた価格上昇を促し、不動産評価額の上昇につながると見込まれます。また、価格上昇を受けて、債務コストの低下は通常、キャップレート(不動産のNOI ÷ 不動産価格)の低下につながります。キャップレートは、物件の長期的な成長見込みを評価し、評価額を算出する際に使用されます。一般的に、不動産投資において、キャップレートの低下はリスクの低減を示唆します。
商業用不動産は、賃貸契約からの安定した長期収入の獲得を目指します。FRBが緩和姿勢を維持し、追加利下げを検討する局面において、予測可能で着実なキャッシュフローは投資家にとってより重要となります。経済状況が変動する中で、安定したインカム源を求める投資家は、足元の利下げ局面を活用することで有利な投資条件を確保することが可能です。市場は現在、来年の追加利下げを見込んでおり、それが不動産市場の更なるサポート要因となる見込みです(図表2)。
過去データを見ると、不動産価値の修正局面に続いて、長期にわたるプラスのトータルリターンが確認されています。図表3が示すように、商業用不動産市場では、景気後退局面の後に複数年にわたる大幅なリバウンドが確認されています。商業用不動産価値を表す指標としてNCREIFプロパティ・インデックス(NPI)を用いた場合、不況期後の5年間において、58.5%から72.4%という非常に高い累積リターンが創出されています。
不動産市場では、四半期比で改善が確認されており、今後におけるパフォーマンスの上昇が示唆されています。長期目線の投資家は底値を狙う必要はありません。なぜなら、投資のタイミングに関わらず、長期にわたる良好なリターンの確保が可能だからです。金利が低下し、さらなる低下余地がある今こそ、バリュエーションのアップサイドを掴む絶好のエントリーポイントであると考えています。
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